2022 独断と偏見で選ぶ!超個人的な優秀女優賞3選

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最後の宿題

2022 独断と偏見で選ぶ!超個人的な優秀作品賞3選と、2022 独断と偏見で選ぶ!超個人的な優秀男優賞3選を発表した後は、いよいよ最後の宿題、優秀女優賞の発表である。

実はこの記事を書いている間、個人的にかなりショックな出来事が発生してしまった。私が応援していた俳優が、突然の舞台降板。自分に、何かできることはなかったのだろうか……などと、あてどもない考えが、ずっと頭の中を巡っている。

誰かを支えたいという気持ちは、日々、言葉に表さないと伝わらない。そんな、至極当たり前のことを、再度認識しないといけないと反省した。

私も普段、Twitterを利用して、作品の感想を共有しているけれど、素晴らしい俳優たちをもっと勇気づけられる方法はないかと探っている。

と、やや現実的な前置きとなってしまったが、今回、私が選出したのは以下の3人である。

これもまた、個人的な趣味なので、批判はすべて受け止めますが、そっと許していただけると幸いに存じます……(平身低頭)。

上白石萌音(千と千尋の神隠し)

東宝が2022年、満を持して送り出した大作が、『千と千尋の神隠し』。もはや説明不要とも言える、宮崎駿監督の名作を舞台化し、演劇ファン以外も巻き込み話題を呼んだ。

当然注目されたのが、主人公の千尋/千を誰が演じるのか?という点。発表されたのは、上白石萌音橋本環奈なる最強の布陣。否応なく、世間から比較される二人に、当初はやや同情の念も覚えたほど。

私は、この二人の千尋を両方見ている。彼女たちの個性は大きく異なるので、単純に比べて評価することは難しい。

自身の持ちうるを開かせて、ハクとの間に淡い感情を浮かべる橋本環奈は、舞台初挑戦とは思えない、堂々とした立ち回り。昨年の『NHK紅白歌合戦』でも、その落ち着いた司会ぶりが高く評価されていたが、彼女は、ステージの中央に立つべき人である。

そして、上白石萌音は、その豊かな舞台経験を活かし、映画から抜け出てきたような千尋を造形した。透き通るような声、不安に震える表情、油屋の世界を勢いよく駆け抜ける姿など、まさにファンがイメージする少女が、そのまま劇場の中に現れた。

演技的な問題を別として、今回、私が上白石萌音を高く評価したのは、演劇未経験の橋本環奈を稽古場から支え、カンパニーの一員として貢献した点にある。

この才能溢れる若き二人は、現場で徐々に相手への理解を深め、切磋琢磨して本番へ臨んでいた。その舞台裏の様子は、NHKの『ふたりのディスタンス』による長期密着取材から窺うことができる。

演劇の聖地・帝国劇場から始まり、全国各地の大劇場を回るツアーは、4ヶ月以上にもわたる、長期戦。もし二人の間に、なんらかの関係性のひびが入っていたら、絶対に完遂できなかった仕事だと思う。

上白石萌音は、ミュージカルで発声の技術を鍛え上げており、板の上で役を大きく魅せる表現の手法も会得している。彼女の存在が、橋本環奈にも肯定的な刺激を与えたのは間違いない。

公演期間中、博多座では橋本環奈が、御薗座では上白石萌音が、新型コロナによる休演を強いられた。それでも、懸命に代演をこなしながら、互いを支え合い、大千秋楽まで演技を続ける彼女たちの姿には、清冽な感動を覚えた。

上白石萌音は、その後も『ダディ・ロング・レッグズ』で、坂本真綾に代わりジルーシャ役を務め、高度な歌唱力を証明している。台詞からナンバーへ切り替わる際の、つなぎが自然なのが、彼女の強力な武器と言えると思う。

NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』の安子役で、国民的な人気を集めた彼女だが、2023年も、ジョン・ケアード演出の『ジェーン・エア』に出演するなど、舞台での活躍が止まらない。引き続き、注目したい存在である。

渡辺直美(ヘアスプレー)

2022年、一、二を争うほどチケットが取れないミュージカルとなった『ヘアスプレー』。コロナ禍による公演中止を経て、ようやく実現に漕ぎ着けた話題作。 私は、幸運にも感激の機会に恵まれたが、非常に好感の持てる良作だった。

この作品が成功した理由は、適材適所といえる配役にある。抜群の歌唱力を誇るエリアンナのソロは情感が溢れていたし、石川禅と山口祐一郎が夫婦役というのも面白かった。

三浦宏規平間壮一上口耕平という、個性の異なるダンサー3人を揃えたのも正解で、絶大に華やかな舞台だったと言える。

その中で、主人公のトレイシーに抜擢されたのが渡辺直美。日本公演で、この役に彼女を得たのは、僥倖だったと思う。

ミュージカル自体は初経験だが、その圧倒的な自己プロデュース力で、有無を言わせない存在感があった。ビヨンセやレディー・ガガといった世界的なスターからも一目置かれる、その高度なパフォーマンス。歌唱やダンスも、魅せるスキルに特化している。

現代の日本で、プラスサイズで主役を張れる女性の役者は、非常に限られている。この状況で、渡辺直美のトレイシーは、文句なしに嵌まり役と言えた。

本職のコメディパートも、もちろん面白かったけれど、私が評価したいのは、この作品の本質的なメッセージを失わずに表現していた点。

彼女自身、日本と台湾のミックスルーツを持つ人であり、複雑な環境の中で育っている。その経験が土壌となって、トレイシーの台詞に説得力を与えているのが発見だった。

全国ツアー終了後は、20kgも体重が減少したそうで、常人には不可能なハードワークだったことは想像に難くない。

今回は、残念ながら新型コロナの影響で、公演の一部が中止になってしまったため、またいつか再演を願う気持ちもある。多忙な人なのでスケジュールを押さえるのも厳しそうだが、また渡辺直美のトレイシーで“You Can’t Stop the Beat”を踊りたいと思う。

花總まり(エリザベート)

2022年、一、二を争うほどチケットが取れないミュージカル、のもう一方が、あの『エリザベート』。これも、あえて解説は要らないと思うが、日本のグランドミュージカルで、長年絶大な人気を誇る傑作である。

今回の再演が、未曾有のチケット難になったのは、これが「花總まり、エリザベートの集大成」と発表されたため。私も、知る限りのあらゆる方策を講じて、なんとか自席を確保したものの、チケットぴあでは「第58希望まで入力しても全滅」という脅威の敗北を味わったほど。

花總まりは、最近、長ネギの入った買い物かごを抱える主婦を演じていたりしたが、やはり本拠地は、ヨーロッパの宮廷。マリー・アントワネットとエリザベートという、ハプスブルクの2大ヒロインを持ち役とできるのも、その生来の高貴さゆえ。

東宝版の『エリザベート』は、宝塚男役トップスター経験者がシシィ(エリザベートの愛称)を務めることが常となっていた。その流れを変えたのが、花總まり。

彼女は宝塚雪組での日本初演で、トップ娘役としてシシィを演じているため、彼女が主演に相応しいと感じていた観客は大勢いた。私も実際に、当時の公演を見たが、少女時代から晩年までの人生を表現する、演技力に圧倒されたのを覚えている。

その後も、継続して出演しているが、2020年度が新型コロナの影響で中止となり、今回の再演に至る。

シシィを演じるのに、途方もない労力が必須なことは、私にも想像できる。自身の生命力を削らないとできないのでは?と思わせる大役。そのため、今回で区切りをつけた彼女の決断には、敬意を表したい。

東宝も、その辺りの事情は理解していて、正式発表前にNHK『あさイチ』で、井上芳雄とのデュエットを披露させるなど、異例のプロモーションを組んだ。

チケットの一般販売では、永遠につながらない東宝ナビザーブを前にしたファンたちが、「またの名を死」「もう生きるあてもない」などと、続々と黄泉の国に旅立つ結果に。

そのような状況で迎えた本番だが、帝国劇場は、客席の空気が恐ろしいほど張り詰めていて、他の作品では決して味わえない緊張を経験した。いち観客ですら、この有り様なのに、主演のプレッシャーたるや……

私は、初日付近の公演と、中日付近の公演を計2回、観劇(1回はコロナの影響で中止)。その間に感じたのは、これだけの経験を重ねた花總まりが、役の深化を止めない凄まじさだった。

ルドルフの死に直面したシシィが、「死の嘆き」に至る場面は、少女のような声で歌い出すのに鳥肌が立った。そこから、トートへの憤怒へと移る芝居は、これまでにちょっと体験したことがないレベルの密度で、畏怖の念すら覚えたくらい。

花總まりが優れているのは、役者として離見の見を忘れていない点だと思う。朗読劇(のようで朗読劇でない)『バイオーム』でも、憑依的な狂気の演技を披露しながら、つねに観客の視線を意識していたのに感嘆した。

自分自身を客観的に見つめられる人だからこそ、今回を「集大成」と位置付けることも可能だったのではないだろうか。

2023年1月現在、『エリザベート』の公演はまだ続行中。博多座では、空前のチケット争奪戦となった井上芳雄との共演回が、注目を集めている。

恐らくは、大千秋楽のその日まで、花總まりは、シシィとして役を深めていくのだと思う。

優秀な人が多すぎる

以上、これも個人的な趣味で3人の名を挙げた。偶然ではあるが、全員、東宝の大作で主演を務めているのが面白い。意識して選んだわけではないけれど、バックグラウンドが異なる人たちが、自分の強みを活かしながら活躍するのは好ましいと思う。

そして、また役者を選び切れない問題が発生している。今回はあまりにも候補が多いので、名前だけ並べると、

  • 望海風斗(INTO THE WOODS/ネクスト・トゥ・ノーマル/ガイズ&ドールズ)
  • 秋山菜津子(貴婦人の来訪)
  • 愛希れいか(エリザベート)
  • 奈緒(恭しき娼婦)
  • 高畑淳子(冬のライオン/4000マイルズ)
  • 天海祐希(薔薇とサムライ2)
  • 美弥るりか(ヴェラキッカ/The Parlor)
  • 吉田羊(ザ・ウェルキン/ツダマンの世界)
  • 月城かなと(グレート・ギャツビー)

……多すぎる。観劇後の短評は、Twitterで記録するようにしているけれど、今後はブログにも掲載せねば。と反省しきり。

今回の選考結果が、誰のためになったかはわからないが、今後も、作品や役者の素晴らしさを伝えることで、自分なりに演劇の世界を応援しつづけたい。お金と体力が続く限り!







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