今日、神保町で上野千鶴子先生にサインをもらう

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人生は短い

最近、人生は短い、と感じることが多くなった。

それはひとえに、私が歳を取った、ということが大きな原因だと思う。

冗談ではなく本当に、人は死ぬ。死ぬ時は死ぬ。そして、死んでしまったら、その人とは二度と会えない。そんな当たり前の事実が、事実として認識できるようになったのは、ごく最近のことだ。

私はこの頃、出来るだけ人に会うようにしている。東京に住んでいれば、沢山の人と擦れ違う。でも、意識して人と会う、というのは、擦れ違うこととは違う。

突然のお知らせ

今日、何気なくiPhoneを取り出したら、Peatixから、あるイベントの通知が届いていた。

Peatix」(ピーティックス)は、自分が関心を持てそうなイベントを自動的に紹介してくれ、チケットも同時に購入できる便利なアプリケーション。

今回のイベントは、『〈女流〉放談——昭和を生きた女性作家たち』刊行記念 イルメラ・日地谷=キルシュネライトさん×上野千鶴子さんトークイベントというもの。

「上野千鶴子」という名前が目に入った瞬間、私は直感的に申し込みを完了した。

支払いを終えた後に、開催日が今日、ということを知るのだが、とにかく間に合って良かった。

「上野千鶴子」と私

上野千鶴子さんは、言うまでもなく日本を代表するフェミニストであり、社会学者である。思わず「代表」(represent)という言葉を、私に不用意に使わせてしまうほど、著名な人だ。

上野千鶴子のサバイバル語録 [ 上野 千鶴子 ]
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私は昔、紛いなりにも社会学を学んでいた。そして、私の指導教官の指導教官が上野さんである。

ということで、私は上野さんの孫弟子だと(勝手に)思っている。「孫」という比喩が適当なのかどうかは、正直判らないけれども。

だが、私は、今の今まで上野さんと直接お話したことがなかった。話そうと思えば幾らでもその機会はあったはずなのだが、勇気がなかったのだと思う。

でも、そんなことで迷っていたら、上野さんに二度と会えないかもしれない。私は、仕事を終えた後、急いで神保町へと向かった。

丁々発止

今回のイベントは、ドイツの日本文学研究者、イルメラ・日地谷=キルシュネライトさんの著書『〈女流〉放談——昭和を生きた女性作家たち』の刊行を記念して行われた。

〈女流〉放談 昭和を生きた女性作家たち [ イルメラ・日地谷=キルシュネライト ]
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イルメラさんと上野さんは80年代から交流があったそうで、その固い信頼関係のうえで、上野さんが得意とする、丁々発止の対談が進んでいった。

「『女流』も『放談』も死語じゃない?」など、のっけから鋭い発言が飛び出す上野さん。それに対して、真摯に当時の記憶を語るイルメラさん。

その二人の対比が面白く、あっと言う間の1時間半だった。

緊張のサイン会

トークイベントの後は、サイン会が実施された。

イルメラさんは、私の本にサインをした際に、「ああ、今まで、名前に『様』を付けるのを忘れてました!」と気づき、ひたすら後悔されていたが、そんな姿も人間味があって素敵だった。

そして、上野さん。

上野さんの前に立った私は、男子中学生のように、ひたすら硬直。だが、なんとか勇気を振り絞って、ひとつ質問をしてみた。

平行線の先に

私の質問は、2017年に早稲田大学で行われた、柴田英里さんとの対談について。

今日のイベントの中でも触れられていたが、川上未映子さんが編集を担当した『早稲田文学』の「女性号」は、非常に評判となり、売れ行きを大きく伸ばした。

早稲田文学増刊 女性号 (単行本 2017年夏号) [ 早稲田文学会 ]
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その中で、「フェミニズムと『表現の自由』をめぐって」というテーマで行われたこの対談。

実際に、動画を観ていただければ判ると思うが、二人の対話が噛み合わず、どこまでも平行線を辿るようにして、終了してしまった。

この件について、私は、「上野さんが、柴田さんの一番の味方になっていたかもしれない」と、ずっと気がかりだった。そのため、ご本人に直接、この対談について訊いてみた。

「勝ち負けじゃないと思うの」と、上野さんは言った。

「柴田さんはあの後、『完敗』だった、と言っていたけれど、そういうことじゃない」と。

その表情を間近で見て、私は、この場に来て本当に良かったと感じた。

「来てくれてありがとう」と微笑んだ、今日の上野さんを、私はずっと忘れないと思う。

何を読むか、誰と会うか

私は本を読むことが好きで、それは今後も変わらない気がする。

でも、本を書いた人に会うことは、本を読むこととは全く異なる経験だ。

人生の残り時間で、何を読むか、誰と会うか。それを私は完全には決められない。

でも、その決められないことが、私にとっては、とても大切なのだと思う。







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