三浦春馬の死
あまりにも信じられない出来事が起こった時、私は自分が、どこか遠くの並行世界へと、迷い込んでしまったような錯覚に陥る。
三浦春馬の死。それを知った時、私は一瞬、この現実を直視することができなかった。
【三浦春馬さん死去 事務所発表】https://t.co/rfmPKjLg0u
俳優の三浦春馬さんが18日、亡くなったことがわかった。所属事務所が発表。「ご心配、ご迷惑をお掛けしておりますが、詳細に関しましては、現在確認中であり、改めてご報告させていただきます」。
— Yahoo!ニュース (@YahooNewsTopics) July 18, 2020
私は、彼と直接交流したこともなければ、彼の出演作品をすべて観ているわけでもない。
けれど、私の心の中に、彼は確かに存在していた。
今、私の感情を正確に映し出すような文章は書けないと思う。
それでも、私は、今日、何かを、自分の言葉として残しておきたかった。
私と彼の記憶
私が彼のことを初めて知った日は、覚えていない。
『恋空』などのヒット作品で、勿論、その名前は早くから知っていた。
だが、当時の私は、彼に対して特別な関心を寄せていたわけではないと思う。
長髪を靡かせて笑顔を振りまく彼は、私にとっては無数にいる若手俳優のうちの一人だった。
けれど、その間にも、彼は役者として真剣に自分の将来を考え、悩み、行動に移していた。
地道に研鑽を重ねた彼の才能が大きく開花したのは、2016年のミュージカル『キンキーブーツ』だ。
この作品でドラァグクイーンのローラを演じた彼は、その演技が絶賛され、一躍注目を浴びた。
私も、この時から彼に対する印象が変化した。彼を一人の俳優として、尊敬するようになった。
そして、2019年に公開された映画、『コンフィデンスマンJP -ロマンス編-』のジェシー役で、私は完全に彼の魅力に取り憑かれてしまった。
無限に続く虚構の中で、彼が自由自在に繰り広げる演技に、私は翻弄された。
彼になら、騙されても本望だ。この作品を観た多くの人々は、きっとそんな感想を抱いたと思う。
ジェシーは、三浦春馬以外の誰にも、演じることができない。
不可視のベクトル
彼はその後、自身が主演するTVドラマの主題歌「Fight for your heart」で、歌手としてデビューする。
そのプロモーションの一環として出演した「FNSうたの夏まつり」でのパフォーマンスは、衝撃的だった。
その身体が空間に描く不可視のベクトルが、無数の矢に変化して、私の心を射抜いた。
当時の私は、このように呟いている。
三浦春馬は同世代の俳優陣の中から、完全に頭一つ抜き出た印象がある。暴力的に人を惹き付けるルックスに、独自の表現力が加わった。底無し沼とも言える。#FNSうたの夏まつり
— ヤシオユアン(YASIO Ewan) (@YasioE) July 24, 2019
私は、この先も続くだろう彼の活躍を、100%信じて疑っていなかった。
因果の糸
抜きん出た容姿、役者としての才能、磨き抜かれたパフォーマンス力。どれを取っても、三浦春馬には非の打ち所がなかった。
けれど、彼の心は、私の想像が及ばないほど、繊細だった。
彼が、このような選択をした理由について、私は判らない。
もしかしたら、何かが、掌に刺さった棘のように、彼に鈍い痛みを与え続けていたのかもしれない。
でも、因果の糸をどのように手繰り寄せても、そこに一つの正解を突き止めることはできないように思う。
単純な事実
私の言葉は、もう永遠に彼に届くことはない。
私はひどく悔やんでいる。彼が大好きであったこと。そんな単純な事実を、もっと早く言葉にしていればよかった。
たとえそれを実行していたとしても、彼に届いた可能性は、ほとんどゼロだっただろう。
だが、もしほんの僅かな確率でも、彼が異なる道へと進む世界がそこに存在したのだとしたら。
私の書く言葉は、何の救いにもならない。
でも、今日、私は独りでも、彼に祈りを捧げることしかできない。
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