Fight for your heart/三浦春馬という存在

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三浦春馬の死

あまりにも信じられない出来事が起こった時、私は自分が、どこか遠くの並行世界へと、迷い込んでしまったような錯覚に陥る。

三浦春馬の死。それを知った時、私は一瞬、この現実を直視することができなかった。

私は、彼と直接交流したこともなければ、彼の出演作品をすべて観ているわけでもない。

けれど、私の心の中に、彼は確かに存在していた。

今、私の感情を正確に映し出すような文章は書けないと思う。

それでも、私は、今日、何かを、自分の言葉として残しておきたかった。

私と彼の記憶

私が彼のことを初めて知った日は、覚えていない。

『恋空』などのヒット作品で、勿論、その名前は早くから知っていた。

だが、当時の私は、彼に対して特別な関心を寄せていたわけではないと思う。

長髪を靡かせて笑顔を振りまく彼は、私にとっては無数にいる若手俳優のうちの一人だった。

けれど、その間にも、彼は役者として真剣に自分の将来を考え、悩み、行動に移していた。

地道に研鑽を重ねた彼の才能が大きく開花したのは、2016年のミュージカル『キンキーブーツ』だ。

この作品でドラァグクイーンのローラを演じた彼は、その演技が絶賛され、一躍注目を浴びた。

私も、この時から彼に対する印象が変化した。彼を一人の俳優として、尊敬するようになった。

そして、2019年に公開された映画、『コンフィデンスマンJP -ロマンス編-』ジェシー役で、私は完全に彼の魅力に取り憑かれてしまった。

無限に続く虚構の中で、彼が自由自在に繰り広げる演技に、私は翻弄された。

彼になら、騙されても本望だ。この作品を観た多くの人々は、きっとそんな感想を抱いたと思う。

ジェシーは、三浦春馬以外の誰にも、演じることができない。

不可視のベクトル

彼はその後、自身が主演するTVドラマの主題歌「Fight for your heart」で、歌手としてデビューする。

そのプロモーションの一環として出演した「FNSうたの夏まつり」でのパフォーマンスは、衝撃的だった。

その身体が空間に描く不可視のベクトルが、無数の矢に変化して、私の心を射抜いた。

当時の私は、このように呟いている。

私は、この先も続くだろう彼の活躍を、100%信じて疑っていなかった。

因果の糸

抜きん出た容姿、役者としての才能、磨き抜かれたパフォーマンス力。どれを取っても、三浦春馬には非の打ち所がなかった。

けれど、彼の心は、私の想像が及ばないほど、繊細だった。

彼が、このような選択をした理由について、私は判らない。

もしかしたら、何かが、掌に刺さった棘のように、彼に鈍い痛みを与え続けていたのかもしれない。

でも、因果の糸をどのように手繰り寄せても、そこに一つの正解を突き止めることはできないように思う。

単純な事実

私の言葉は、もう永遠に彼に届くことはない。

私はひどく悔やんでいる。彼が大好きであったこと。そんな単純な事実を、もっと早く言葉にしていればよかった。

たとえそれを実行していたとしても、彼に届いた可能性は、ほとんどゼロだっただろう。

だが、もしほんの僅かな確率でも、彼が異なる道へと進む世界がそこに存在したのだとしたら。

私の書く言葉は、何の救いにもならない。

でも、今日、私は独りでも、彼に祈りを捧げることしかできない。







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